新しい言語を学ぶとき、辞書こそ最も大切なテキストとなることは、どなたも認めることと思います。至極当然のように机の上に置いておきますが、じゃあ果たして、ちゃんと使えているのでしょうか?
表ページ(「ジョークで英語学習」)でも触れたように、辞書は意味をチェックするだけのものではありません。そのような使い方では、例の「1.イメージし、2.位置を与え、3.使ってみる」という脳の働きに沿わないので、頭に引っかかりません。
辞書を「引く」気持ちは次のような考え方から、起こってくるのでしょう。
ところがこの「2」が間違っているのです。部分的な効率を求めることで、全体としてはとてつもなく効率が悪くなってしまう現象が、よく起きるのです。特に脳の働きにおいては、絶対にそうなると言っていいでしょう。
このあたり(TOC:Theory of constraints 制約条件の理論)に興味を感じられた方には「ザ・ゴール」という本を紹介いたします。 「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」エリヤフ ゴールドラット(ダイヤモンド社)
効率(部分)を求めることで、かえって効率(全体)が悪くなるという悪循環が世の中には多々あるのです。辞書を「引く」ことも、その悪循環のうちの一つです。あせって時間(部分的な20分)をケチることで、全然覚えられないしすぐ忘れるという最悪の結果(全体として永遠にできない)を招いてしまうのです。
「部分最適化」という間違った考え方を脱するには、自分を信じる根性が必要になります。
テキストより辞書の方に、より多くの時間を取られてしまうようなこともあるでしょう。そんなときでも「うわ、これじゃあ時間ばっかりかかってダメだ」などと焦らないことです。最も近い道を歩いているのだと信じてください。
辞書をしっかり読めば、たいてい1回(かそこら)で覚えてしまいます。もちろんイメージ化がうまくいかなくて、何度も繰り返す羽目になることもありますが、英単語勉強をしているときのように、「きれいさっぱり」忘れていることは少ないです。
何度も忘れてしまうより、一度に一つずつ着実に覚えていく方が、全体としては効率がいいのは、「東京フレンドパーク」を見なくても分かります。
また部分として考えても、「いちいちノートに書き写す」とか「何十回も書く」といった作業がない分、そんな余計に時間がかかったりしません。
「例文と語源を読め」と表ページで説明しましたが、そのときどんな態度を取ればいいか、分かりますね? そう「1.イメージし、2.位置を与え、3.使ってみる」です。
逆に言えば、例文と語源こそが「1.イメージし、2.位置を与え、3.使ってみる」手助けとなってくれるものです。
具体的に見てみましょう。例えば、「determine」という単語を調べたとします(かつての筆者にとっては、寒気がするに十分なほど「長い」単語です)。著作権の関係もありますので、ここでは要約を挙げます。
さて、ここからがスタートです。粘れば粘るほど「良し」とします。ただ漫然と読むのではなく「1.イメージし、2.位置を与え、3.使ってみる」ことを忘れずに。
まず語源を読みます。語源だけでスパッとイメージ化できることは多くあります。語源の詳しい辞書を買いたいところですが、辞書は高いので、次の本をオススメします。 「英単語に強くなる」林信孝(岩波ジュニア新書)
どうして語源から始めるのかと言えば、それこそが「正統な」単語のイメージだからです。正統であるがゆえ、細かいニュアンスの違いや派生語などにも対応できるようになります。語呂合わせのようなイメージ構築法もありますが、正統ではないので、応用が利きません。
determineの場合を見てみましょう。とりあえず語源「termine(限界)」から、映画「ターミネーター」を思い出したりします。そのものはなく、terminateを見つけます。
調べたい単語(この場合determine)に関しては、なるべく寄り道をして、少しでも余計に知識を関連づけた方が、より覚えやすくなります。
ぼくらは「覚えられない」のではなく、「思い出せない」のです。ということは、関連ある知識が増えるほど、思い出す鍵も増えることになります。
とは言っても、何事も加減が大切です。determineと直接繋がらないまでに離れるようでは「関連ある知識」とはなりませんので、やめておきましょう。
この寄り道はあくまでも「調べようとしている第一の単語(この場合determine)」のために行うものです。例の3ステップで言えば「1.イメージし、2.位置を与える」ための道具を拾うためです。
terminateに戻ります。
「なるほど「限界」から来ているな。じゃあ「ターミネーター」は「終わらせる人」か」くらいの感想をつぶやき、周りを見回します(辞書の中です)。
termは、語源「限界」からずいぶん広がっちゃってるな、と確認。She and I are just on speaking terms.だなんて言い訳をしてみます。
ほほう、terminalはまさに語源「限界」だ、とこれなら一発で覚えてしまいます。ここで「determine=de(下へ)+termine(限界)」だとはっきり認識することが出来ました。いよいよ“determine”の、語源に沿った正統的なイメージを構築します。
“determine”というとき、今まで(語源にこだわっていなかった頃)は大ざっぱに一つの単語として、ただ“determine”と捉えていました。これからは「de(下へ)+termine(限界)」です。
具体的には、次のように考え方を変化させようということです。
(かつて)「determine=決心する」
(これから)「determine=de(下へ:自分で手を下す感じ)+termine(限界)=区切りを見定める感じ≒決心する」
どうですか?“determine”と「決心する」の間に、微妙なニュアンスの違いがあることって気付きますね。「決心する」という中に、区切りを与える感じはありません。“determine”の方は、何かもやもやした、焦点の定まらないものがあって、そこにビシッと線を引いて、領域を定める感じがあります。
これが“determine”のイメージ(原型)となります。これからの作業は、そのイメージを英語世界の中のbrick(レンガ)として、しっかり定着させることとなります。
もう一度、辞書の説明を見てみましょう。
今度は例文を使って、イメージの定着を図ります。なるべく感情を加えるのがコツです。感情を加えることで、自分なりに使ってみることになります。その際、ナガシマ英語のように、英単語はオリジナルのままに使います(その英単語に全くイコールとなる日本語はありませんから)。
John determined to marry her.→
Johnは彼女と結婚することをついにdetermine(de:手を下す感じ+termine:限界=「モヤモヤに領域を与える感じ/区切りを見定める感じ」を思って)したのか。ま、そろそろdetermineどきだったからな。
I have determined never to trust her.→
彼女に裏切られたからな。ぼくはもう彼女を決して信用しないってdetermineしたぞ。determineしちゃうと、結構長引くぜ。
That experience determined him to become a teacher.→
あの経験が彼にdetermineさせたか。determineさせる出来事っていうのは人それぞれだな。
Prices are determined by demand.→
経済の先生が言いそうだぞ。「Prices are determined by demand」。価格は需要によってdetermineされる。
こうやって感情を入れながら、例文を一つでも多く読んでいきます。determineという単語を一秒でも長く思い描くのです。
もちろん最高なのは、自分で例文を作ってみることです。その単語を自分の言葉として使ってみることで、なじみが出てきます。なるべく身につまされるような、リアルな例文にしてください。他人行儀な例文では意味がありません。
筆者の場合は、そうですね、こんなのはどうでしょう。
"You have to determine it as soon as possible." she said.
今度はdetermineの周りを見ます。関係のある単語がきっとあります。ケチケチしないでそういうのを拾っていきます。部分最適化しない、つまりケチケチしないことで、かえって全体としては効率が良くなることを忘れずに。
ありました。determination(名詞)、determinate(形容詞)、determinative(形容詞)。ざっと眺めると、determinationがメジャー級の単語、後の2つは、かなりマイナーだと分かります。よって、ここではdeterminationのみをチェック。
例文を読みます。
He is a man of great determination.→
彼はすごいdeterminationの男だ。男はdeterminationが大事だな。
After much discussion we came to a determination.→
たっぷりの話し合いの後、ぼくらはあるdeterminationにたどり着いた。やっとdeterminationを得ることができたな。
自分の例文も作ってみましょう。こんなのはどうでしょう。
My boss has everything but determination. (困った上司です)
確かに。でも、辞書ばっかりをやたらに読む期間(辞書読み期間)は、永遠ではありません。徐々に英語世界を構築する単語が溜まってきて、辞書を開く回数が減っていくからです。人によっても違いますが、辞書読み期間は数ヶ月という単位になるでしょう。
ふと気が付くと、英語の辞書に埃が溜まっていた! なんてことになります。楽しみですね。
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